読売新聞

「世界で一人」のプロ風鈴演奏家、古民家で奏でる癒しの音色

~記事本文~

京都市から三重県伊賀市比土の古民家に移住してきた、風鈴を楽器として操る「風鈴演奏家」の日向真さん(53)が1日、約30畳ある和室を使った音楽スタジオをお披露目するコンサートを開いた。スタジオには約180個の様々な風鈴がつるされ、さながら風鈴の博物館。日向さんは近隣の住民らを昼の部と夜の部に各30人招待して約10曲ずつを披露し、参加者は「チリン、チリン」と澄み切った音色を楽しんだ。(尾崎晃之)

 日向さんは神奈川県厚木市出身。中学生時代から作曲活動を続け、会社員をしていた2003年頃、「心地よい響きをずっと気に入っていた」という風鈴を、楽器として演奏に生かすことを発案した。

 鳴らした時の音階は全体サイズ、厚み、下側の口部分の大きさによって決まることから、製造業者の倉庫を訪れて演奏に使える風鈴を探していった。音色の幅を広げようと、世界各地の風鈴の収集にも力を入れた。

 また、演奏時、パイプにつるした複数の風鈴を別個に鳴らすための道具に羽毛を使うことを編み出した。

 プロの演奏家として作曲やCD収録に励み、京都市東山区を拠点に、寺社や商業施設などで年間100回以上のコンサートを重ね、18年7月に1000回を達成するなど活躍してきた。

 だが、コロナ禍で仕事の依頼が激減。日向さんは「いつか古民家で暮らしたいという夢を早める形」で、木津川沿いの美しい農村風景にひかれたという伊賀市の古民家に、昨年9月に移住してきた。

 木造2階建て築100年の古民家は約10年間、空き家となっていたために傷みが激しかったが、床の張り替えといった作業を独力で行い、「伊賀・風鈴屋敷 風処」としてよみがえらせた。音楽スタジオの広間には、江戸風鈴や西洋の風鈴「ウィンドチャイム」など様々な風鈴を飾っている。

 日向さんはこの日のコンサートで、「世界で一人のプロ風鈴演奏家として伊賀を拠点に活動し、60歳までにコンサート2000回を達成したい」とあいさつ。風鈴約30個を使い分け、尺八や琴、笛、太鼓なども駆使し、奈良県桜井市の三輪山をイメージしたオリジナル曲や「赤とんぼ」などを演奏していった。来訪者全員が、配られたウィンドチャイムを揺らして合奏する時間もあった。

 近くの主婦(74)は「美しい音に癒やされて心がスッキリした」と感動していた。

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